普段何気なく過ごしている空間は、採光、照明方法、光源などの種類によって、人の感じ方に影響を及ぼしています。私たちの活動を安全で効率的に、かつ快適に行うには、人の特性に合った光環境を作っていくことが必要になります。

例えばオフィスの室内に射し込む自然光は、曇りの日、晴れの日でも変わり、窓の大きさ、位置、方向によっても変わってきます。このような自然光とその他の照明とのバランスが、人が安心・安全かつ効率的に仕事ができるか、快適に過ごせるかに繋がっていきます。また、街の照明も、周囲の状況や目的に応じて適切に設計されているかにより、景観や周囲環境に影響を及ぼしますので、設定過剰な照明にならないように適切に光を設計することが大切になってきます。このような視環境設計を進めるために360度輝度・色度分布を人の目で見てどう感じるかをソフトで解析し、その値を確認できるようにしているのが株式会社ビジュアル・テクノロジー研究所の山本三七男様です。今回は山本様にどのようにTHETAを光の情報収集に活用しているのかインタビューしました。

 

山本様は、東京工業大学の中村芳樹名誉教授の研究テーマである「視環境」について世の中に広めていきたいという想いがあり、株式会社ビジュアル・テクノロジー研究所で視環境設計の解析ソフトや、360度輝度・色度分布をさまざまな視環境で収集した「あぴ探ARアーカイブ」のソフトウェア開発を担当しています。

 

視環境設計にTHETAが必要な理由

-最初に、視環境設計はどのような場面で必要になるのでしょうか?

 

例えばオフィス設計する場合、暗い場所を作らないようにするにはどこに照明を設置すればいいか、窓から差し込む自然光との兼ね合いも考慮して照明の選定、設置場所を設計する必要があります。緯度経度、日時で太陽の位置を計算できるので、気象庁のデータを使いながら外が曇りの日や晴れの日にどれくらいの光が入ってくるかをシミュレーションすることができます。これに基づき、窓から入ってくる自然光と、それに対して照明器具から提供される人工光を合わせたとき、どのような明るさになるかを我々の技術で解析して、そこで出た結果を元に、照明器具を選択、もしくは器具が決まっているなら、それをどこに設置するか、どの向きに置くか等を決めるなど、全体の明るさを設計することができます。

さらに、オフィス全体が出来上がった後に、THETAでその場所を撮影して、THETAの画像から輝度・色度などの数字データを取り、適切な視環境になっているか確認することができます。

 

-なるほど、オフィスや工場などの作業現場で効率的かつ安全に仕事をするためにも視環境設計が必要なんですね。THETAのどのようなところが重宝していますか?

 

THETAが出る前から、自動調光システムを開発していました。

当時はスチールカメラで撮影していて、まず視点を決めて、そこから窓を見た時、机を見た時など、何枚も何枚も写真を撮る必要がありました。そんなにたくさんは撮れないので、壁と窓とその間の3パターンを決め、太陽が動くので時間を変えて撮影していました。撮影後、その写真データを活用し、夜間はどのくらいの明るさが必要なのか、昼間はどのくらいかを計算します。視点方向の写真を撮っていなければ、そのデータは取れていないので計算できませんでした。

それが、THETAであれば1ショットで360度を撮影できて、めちゃくちゃ効率が上がりました。

 

その他に、スチールカメラだと端は暗くて真ん中は明るくなるなど1枚の写真の中で明暗のバランスが正しく撮影できないのですが、THETAの場合は全部補正してくれているのもとても楽です。時には片側に強い光源が入り込みすぎると少しバランスが崩れたりすることもありますが、通常では前後のレンズの重なり部分は明暗差がほぼ無いのが良いところです。

 

大きな工場の設計現場では、作業に必要な視環境設計をするために、部屋の明るさ、輝度がどれくらいになっているか、普段は照度計を人が持って測っています。大きな工場になると天井が高いので、そこまで照度計を持っていけず、作業用の高所の照度を測れない事がありますが、THETAだと一脚に取り付けて撮影できるので、THETAのデータから照度を計算することが可能です。そういう場面でTHETAが活用出来ることをお客様にご案内すると、皆さんTHETAを使いたいとおっしゃるので、うちのソフトを使っているお客様は、ほぼ100%THETAを持っています。

 

ビジュアル・テクノロジー研究所で開発されているソフトではどのような事ができるのでしょうか?また、どのような業種の方が利用されているのでしょうか?

 

弊社では、360度輝度・色度分布をさまざまな視環境で収集した「あぴ探ARアーカイブ」の他に、これまで不可能であると考えられてきた、建築デザインの段階で完成後の見え方を正確に予測、検討できる設計支援ツール「アピアランス設計支援ツール“REALAPS®-Omni”」 を開発・提供しています。

 

「アピアランス設計支援ツール“REALAPS®-Omni”」では、利用している測光量に基づいたCGシミュレーション、輝度測定、明るさ(知覚色)画像、視認性画像、グレア画像、順応関数を作成・分析することにより、設計プロセス全体を通しての見え方を定量的に検討することができます。

 

ご利用いただいているのは、ゼネコンや設計、照明メーカー、照明システム会社などで、特に、省エネのために、できるだけ自然光を利用しようとする設計を行う際には、ほぼ必ずご利用いただいています。また、ゼネコンさんは全体の設計の中で部屋の明るさを設計するのですが、その中で照明関連は照明デザイナーや照明メーカーに委託する場合があり、そのような場合には、明るさの評価基準が欲しいということで我々のソフトを使っていただくこともあります。実際にTHETAで撮影して、どんな明るさになるか数値データを見て、それと同じような明るさになるように照明器具を設置しています。その他にも照明メーカーやブラインドメーカーは自分の器具がどれくらい部屋を照らせるかという器具の紹介にも使っています。

 

あとは、大学で視環境の研究や、照明デザイナーの学校、材料メーカーなどでも利用され始めています。

 

-THETAで撮影した画像をソフトに取り込んで、記録されている全方位の数値データを利用されているのですね。

 

THETAでブラケット撮影した画像をhttps://apitan-ar.net/公開しています。

ユーザーの皆さんが様々な場所で撮影した写真を使ってグレア(URG_n値)、明るさ(NB値)、輝度、照度(反射率を用いて輝度より算出)を確認することができます。THETAで撮影することによって、これらの数値データが取れるので、その数値を元に評価結果を表示しています。照明メーカーや照明デザイナー、また景観の色彩計画開発者様などはユーザーが希望した照明器具を点灯した場合の360度視環境をユーザーに数値データで説明することができます。これを見ると、照明デザイナーが設計した外観はキレイに出来上がっているのが分かりますが、後から追加した自販機などは明る過ぎるのも分かります。

12月はイルミネーションが色々なところで始まってきますが、下手な照明デザイナーが設計した場合と上手な照明デザイナーが設計した場合のキレイさも違います。

例えば、銀座で撮影した夜景の画像は、おすすめ度でグレアの評価が「★=1」になっていて、すごく眩しいところが多いということが分かります。グレア(眩しさ)が多いと、視対象物を見えにくくしたり、またその存在が不快感を与えたりすることになります。このような情報を使って、照明や色彩のデザイン設計を志す人が、さまざまな視環境を体験し、比較検討することで「光の目利き」「色の目利き」としての腕を磨くことができるようになります。

画像をクリックすると、その場所の数値データが表示されます。

 

グレアの基準としては黄色の0.6くらいです。赤くなければ大丈夫ですが、赤いところが多いので「★=1」という評価になっています。

 

UGR式と呼ばれる世界で利用されているグレア(眩しさ)評価式を使ってグレアの程度を推定しています。

 

その他にも、明るさ、明るさ検討、色彩、輝度、照度を確認することができます。

それぞれの画像の解説について詳しくはこちらをご覧ください。

https://apitan-ar.net/realaps-data-viewer-guide/

 

 

-なるほど、今後、イルミネーションを見る時は視環境評価がどうなのか?という視点で見るのも楽しそうですね。

最後に、今後の山本さんの展望をお聞かせください。

THETAで表面反射率、屈折・透過率測定をやりたい。THETAで部屋を撮影して、その壁の反射率などが分かれば、設計のシミュレーションに入れていけるので、将来的にはそれをやっていきたい。

それと、THETAの中にうちのシステムを入れて、光の解析データがJPEG上で見られるという事が共同で開発できたら理想だなと思っています。

 

個人的には、プログラムを作っていれば幸せで、朝から晩までプログラムを作っていたい。

ソフトだったら、リモートでも開発可能なので、アプリケーション、デバイス、サーバーシステム何でもいいので、作っていたいと思っています。

あとは子どもたちにコンピューターのプログラムを教える事を和歌山でやっていて、今は、中学生、高校生、大学生まで来てくれていまして、プログラマーを増やすためにこの活動もずっと続けていきたいと思っています。

 

-お話を聞かせていただきありがとうございました。

 

山本三七男様

2013年、走りながらクラウドにデータをアップロードするモジュールと、車載用のカメラを組み合わせたシステム「クラウドコレクター」を製作し 、コンテストで準優秀賞を獲得する。その際にビジュアル・テクノロジー研究所から声がかかり、有機ELの照明を使った会議室の調光システムを手掛けた。

その後2014年からビジュアル・テクノロジー研究所でソフトの開発を行っている。

Visual Technology Laboratory http://vtl.co.jp/

あぴ探AR ARCHIVE https://apitan-ar.net/

※ビジュアル・テクノロジー研究所のソフトウェア・サービスはこちらをご覧ください。
http://vtl.co.jp/business/software-2-3/