1ショットで上下左右すべての風景を撮影できる360度カメラ「RICOH THETA」。
旅行、おでかけ、思い出を記録するプライベートな用途だけでなく「仕事道具」としても活用する人も多い。
今回は、建築設計の仕事で360度カメラRICOH THETA Z1を有効に活用している一級建築士事務所 ワカ設計室 Waka Design Roomの君塚 和香 氏に話を伺った。
360度カメラRICOH THETAの導入でワークフロー改善、業務効率アップ!
君塚氏はRICOH THETAの初代機(2013年発売)からのユーザーだ。THETAを使う前までは、建築現場の空間を記録するために一眼カメラを使用し、撮影した複数枚の画像を張り合わせるスティッチング処理を行って360度写真を生成していた。1ショットで撮影できるRICOH THETAの発売は衝撃的で発売日すぐに購入したと振り返る。
▷THETA登場前の撮影フロー
THETAを購入する前に360度写真を生成するために使っていた機材は、一眼カメラと超広角の魚眼レンズ、それに専用のリグと三脚を組み合わせだ。1スポットごとにセッティングの手間と、方向を変えての複数枚の撮影に、少なくとも5分〜10分程度の時間がかかる。しかし、撮影以上に編集が大変だと君塚氏は語る。
「一眼レフカメラでの撮影ではピントと露出を固定した複数枚(最低でも6枚、多い時は20枚くらい)の写真を専用のスティッチソフトでつなぎ合わせて1枚の全天球画像がようやく出来上がります。建築の場合は室内外の明暗差も大きいことが多いので、シーンと画像の用途によっては露出を変えた複数枚をブラケット撮影し、HDR処理をしてつなぎ合わせる必要があります。この作業にはソフトウェアのスキルはもちろん、複数枚を手動で1枚ずつつなぎ合わせていく根気と時間が必要となります」
一眼レフで複数枚撮影した場合のスティッチングの様子(パノラマ的な撮影を始めた最初期2005年のもの)
実際の編集作業では1枚の360度写真を生成するのに一時間程度、こだわればそれ以上の時間がかかっていたそうだ。
また、一眼レフでの360度撮影は前述した通り複数の特殊な機材を準備する必要があり大掛かりなシステムとなる。その一方で小型軽量のTHETAであれば手さげ鞄一つで現場に向かうことができる。
▶RICOH THETAの活用によって、撮影編集の負担が軽減しワークフローが大幅に効率化。
360度カメラRICOH THETAの建築設計業務への活用
建築の現場と設計業務で、RICOH THETAはどのように活用されているのだろうか?
君塚氏は「360度画像で空間を記録し確認することで、多くの業務を改善、効率化することが可能だ」と語る。
それぞれの業務での活用方法を君塚氏に伺った。
リサーチおよび現場記録 〜現場の情報をリッチに残す〜
建築前のリサーチでは日当たり、周辺環境、眺望などの情報を360度画像で記録しておく。この360度の空間情報は後々のフローで見返して確認する用途で使用している。
通常のカメラで撮影したものはあとで見返した時に、どの場所を撮ったのか迷子になることも多い。THETAで全体を押さえておくと、部分写真の位置関係を把握することがとても楽になる。
また、基礎やコンクリートの鉄筋の組み具合、骨組みの重なり、電線の配線など、工事の進行に合わせて記録しておくことで、仕上げ剤で隠れてしまった後でも、そこに何があったか見返すことが可能だ。
(現場に行くたびに定点で撮影しておくことで、タイムラプス的に進行を表現することもできる。)
竣工写真&バーチャルツアー 〜建築の完成情報を残し伝える〜
建物が完成した状態を360度写真で記録しておくことで数年後に振り返るときに役に立つ。例えば施主からの問い合わせがあった時に全体像を再確認できるため的確な回答にもつながる。
また360度画像をバーチャルツアーにすることで現場に行かずとも空間の疑似体験が可能だ。
改修の前と後の画像を360度で空間ごと比較できるので、お客様には変化が伝わり、非常に喜んでいただける。
リフォーム 〜調査を円滑に、確認の抜け漏れを防ぐ〜
すでに存在している物件の改修工事の場合、窓、内装、床を基準にリサーチを行う。
現場では、お客様が同行しコミュニケーションを取りながらリサーチをすることも多いため、自分のペースで時間をかけて写真を撮ることが難しい。
THETAであれば、お客様と話しをしながらでもさっと記録ができるため、撮影漏れが起こりにくい。
また床下、天井裏などアクセスが悪く狭い場所の記録が難しい調査も、THETAを差し込んで撮影することで全方向の記録が可能だ。
(THETAの展開画像にPhotoshopで通り心No.を入れてフレームの組み方を再確認 THETA 初号機で撮影)
リフォームでは、そもそも図面が存在しない場合もあるが、THETAで撮影しておけば調査で測定して作成した図面と360度の現場写真を照らし合わせながら、じっくりと確認作業をすることができる。
業務活用にはフラッグシップモデルTHETA Z1が最適。
君塚氏はTHETAの初代機から始まり、THETA m15、THETA S、THETA V、THETA Z1と歴代に渡りTHETAを使用している。
その中でも、業務での利用には1.0型裏面照射型CMOSイメージセンサー(約23MP 6720 × 3360)搭載、手ぶれ補正、RAW現像、本格的な機能を小型ボディに凝縮したTHETAシリーズのフラッグシップモデルTHETA Z1が最適だと言う。
THETA Z1が業務用途に向く理由は、静止画の画素数(ピクセル数)が増えたことで360度画像が鮮明になり確認できる情報量が業務に十分なレベルまで増えたこと、センサーサイズが大きくなったことでノイズが減り暗部の写りが前モデルと比較して一段階良くなったこと、RAW撮影に対応したことで、白飛び、シャドウの潰れを調整できるようになったことが理由だ。
また、君塚氏はTHETAでの撮影のためにいくつかのアクセサリーを使用している。
底面の映り込み回避と充電ケーブルのアクセス性を良くするためのエクステンションアダプター。男性が立ったときの目線の高さで撮影することを目的として、長めの一脚も愛用している。また一脚には転倒を防ぐため底部にウェイトをつけている。一脚は用途に合わせて複数本所有し、最も長いものは7.5mもあり、ドローン規制が強まる中で擬似空撮も可能になり、新築計画時の2Fの眺望確認等で使用している。
※リコー純正品では、以下をラインナップ
エクステンションアダプター TE-1
RICOH THETA スタンド TD-1 / TD-2
RICOH THETA スタンドウェイト TT-1
なくてはならない仕事の相棒、RICOH THETA。
最後に、設計建築業務にRICOH THETAの導入を検討している方へのアドバイスを伺った。
「現場での確認業務が必要な方には、360度の画像で記録して業務に有効に活用できることを実感して頂きたいと思います。360度撮影は一眼レフカメラでも可能ですが、RICOH THETAは比較にならないほど扱いやすいので手軽にチャレンジできます。現場を360度画像で漏れ抜け無く記録できるので、業務効率もあがりますし、確認作業の精度も上がります。今の私の業務にはRICOH THETAはなくてはならない仕事の相棒のような存在です。できれば現場監督もTHETAを使いこなしてくれれば頻繁に現場に行かれない場合でもコミュニケーションが円滑になると思います。手持ちのTHETAを貸し出してもいいくらいです(笑)」
RICOH THETAは、カメラの操作や画像編集などの特別な知識が一切なくても撮影ボタンひとつで360度画像を撮影できる「扱いやすさ」に配慮して開発しているカメラだ。360度画像を活用した業務改善の第一歩には、ぜひRICOH THETAの導入をご検討いただければ幸いだ。
本編動画(君塚氏の実際のTHETA活用紹介)
取材協力:一級建築士事務所、ワカ設計室 Waka Design Room 君塚和香 氏
参考記事:<建築士編>360度カメラTHETA Z1を、建築設計の仕事や思い出記録に活用!