長野県岡谷市のうなぎ屋「観光荘」の店主の宮澤健さんと、松本工業高校の生徒3名、徳永さん、竹村さん、白瀬さんがタッグを組み、うな重とTHETAが載った気球を成層圏まで打ち上げ、成層圏でうな重と周りの風景をVR動画で撮影する「うなギャラクシープロジェクト」。前回の記事(2021年10月公開)で、11月末の打ち上げに向けての意気込みなどをインタビューしましたが、その後、結果はどうなったのでしょうか?
打ち上げ当日の様子などを宮澤さんに伺いました。

うなギャラクシープロジェクトの結果

11月末の本番打ち上げ結果について教えてください。

上空約11kmの成層圏での撮影は成功し、成層圏最高地点の上空約34kmでは、THETAのシャッターボタンが凍ってしまい撮影失敗となりました。結果としては、うなぎとTHETAを載せた気球も無事に回収できましたし、高校生たちが実現したかった成層圏での360°動画撮影を無事に成功させることができたと思っています。THETAで撮影できなかったところも、うなぎの状態とTHETAの動作確認用に載せていたアクションカメラで撮影できていたので、それも良かったと思います。


打ち上げ本番ダイジェスト!

いつどこで本番の打ち上げをされたのでしょうか?

11月27日に新潟県上越市で打ち上げを行いました。はじめは松本工業高校のグランドで打ち上げることを考えましたが、気球の打ち上げに協力していただいているスペースエンターテイメントラボラトリー様の拠点が南相馬にあることもあり、気球の回収を南相馬で行うことにして、その時期の天候を考慮して上越市を打ち上げ場所に決めました。打ち上げ当日は天候が曇りで風も強く、海も荒れていたため、南相馬の海にギリギリ着水するように放球しましたが、風で流され南相馬市内に降りました。

本番では、高校生が役割分担をしており、徳永さんと竹村さんが打ち上げ班、白瀬さんが中継班を担っていました。中継班は、THETAが上空を飛んでいる間に、シャッターを遠隔で押す役割です。シャッターを遠隔で押す装置が気球と交信できるのが猪苗代湖周辺であることが事前にわかっていたため、白瀬さんは猪苗代湖周辺に行きました。

打ち上がる気球を見つめる宮澤さん、徳永さん、竹村さん (中央左から)

打ち上げ前に徳永さんと竹村さんがTHETAのシャッターボタンを押して、打ち上げた後、中間地点の猪苗代湖周辺で白瀬さんがシャッターボタンを押しました。

気球が着水する予定の地点には白瀬さんが近かったため、白瀬さんが回収に向かいました。徳永さんと竹村さんは、新潟県から回収地点に、先生に車で連れて行ってもらい、回収地点で白瀬さんと合流したそうです。その後、高校生3人はホテルで映像を確認しました。

中継班として働く白瀬さん(左)
PCの画面で、受信感度、THETAの録画状態、THETAのLED点灯状態、気圧、湿度、温度を確認(右)

前回のインタビューでは、THETAが太陽光の熱で高温になり電源が落ちてしまう可能性があるため、熱対策を考えられていると伺いましたが、本番では問題なかったのでしょうか?

熱対策は、THETA本体が黒いと熱を吸収しすぎてしまう可能性があるので、白いテープを貼って熱を反射させるように工夫したため、熱による問題はありませんでした。

熱対策のため白いテープが貼られた本番用のTHETA

クラウドファンディングで資金を集められているとのことでしたが、結果はどうなりましたか?

クラウドファンディングは2回実施しました。1回目に228万円集まり、その他にお客様から直接ご寄付などを頂いていて、実質250万円くらいになりました。目標資金は300万円だったので、残りの50万円を2回目のクラウドファンディングで募集し、達成することができました。

年配のお客様が、面白いことをやっていると言って寄付してくださったり、地元で製造業を営んでいる企業が、チャレンジを応援したいと言って寄付してくださったり、高校生の徳永さんが住んでいる朝日村の村長さんがご寄付してくださったりしました。温かい方が多く、ありがたかったです。

クラウドファンディングのリターン品がやっとできあがったので、ご支援いただいた皆様にお届けする事ができました。

THETAで撮った成層圏の動画はご覧になりましたか?

はい、見ました。VRゴーグルを使って見たところ、本当に足がすくむような感じで、すごくワクワクしました。下の方向を見ていると、地面が遠くなって見えました。

成層圏での2Dの映像もはっとするものがありますが、地上や雲、太陽などの全てを、臨場感を持って見ることができる360°映像は改めてすごいと思いました。

2Dの映像は定点しか撮れないため、あらかじめ映そうとした範囲内しか見ることができませんが、THETAの映像だと自分が見たいところをどこでも見ることができました。

THETAが撮影した成層圏の風景

本番の打ち上げに対する感想を教えてください。

高校生の研究が最大の目的だったため、彼らに主体的にやってもらうよう、なるべく口を出さないようにしていました。活動開始当初よりも打ち上げ時の方が、高校生たちが主体的に活動しているように見えて、成長を目の当たりにできたのが一番印象に残りました。目的の映像も撮れましたし、多くの方にも楽しんでもらうことができましたので、やってよかったなと思いました。

気球を回収後、THETAの録画した動画を確認する高校生たち

本番打ち上げ後に報告会も実施しましたので、以下の動画で是非ご覧ください!


打ち上げ報告会

今回の取り組みに対する感想と今後のビジョン

今回の取り組みに対する感想と今後のビジョンを教えてください。

うなぎ屋が宇宙を目指す中で、すごく素敵な縁を色々なところからいただき、その中で高校生と出会い、今回の取り組みを通して多くの方々に喜んでいただくことができました。この取り組みは終わってしまいますが、ずっと宇宙を目指し続けたい気持ちになることができ、情熱が絶えない良いスタートラインに立てたので、やってよかったと思っています。

今後に関しては、観光荘としては、うなぎの宇宙食の認証を取るのが一番大きなビジョンです。その先に宇宙旅行ができる時代が控えていると思います。今回一緒に活動した高校生の徳永さん、竹村さん、白瀬さんが私たちの年になる頃にはもう少し宇宙旅行のハードルが下がっていると思うので、その時に私たちが作ったうなぎを食べてくれたら嬉しいですし、うなぎを食べている様子を360°画像で撮影してくれたらもっと嬉しいです。今後はそれぞれ別々になりますが、みんなが宇宙を目指しているというのは変わらないと思いますので、それぞれの報告を楽しみにしながら、自分たちの夢を実現し続けていけたらと思います。

うなぎの宇宙食の認証について、直近のご予定はありますか?

今年の秋に、宇宙食の2次審査と立ち入り検査を控えています。それをクリアすると、宇宙食として認証され、宇宙飛行士の方に持って行っていただけます。来年宇宙に行く予定の古川宇宙飛行士が宇宙でうなぎを食べたいとおっしゃっていましたので、認証を取ることができれば持って行ってくださる可能性があります。最近、宇宙食のうなぎのパッケージが出来て、こんな感じになる予定です(以下画像参照)。宇宙食のうなぎは普通の食品としても流通できるものですので、クラウドファンディングのリターン品として提供した後に、観光荘のECサイトでも販売を始めようと思っています。

宇宙食のうなぎのパッケージ

他に考えられている取り組みはありますか?

うなぎは稚魚を全部天然に依存しているので、海流や気候などの地球環境の変化によって、獲れなくなる可能性があります。そのため、天然資源を守る取り組みとして、何ができるだろうということを最近すごく考えています。地方のうなぎ屋でも、無理だと思わずに、色々な人と一緒に協力をしながら、うなぎの資源や文化を守っていく活動を、今年からまた加速していきたいと思っています。ありがたいことに、色々な大学の先生がうなぎの資源を守る活動に興味を示してくださって、その時に「宇宙の取り組みを見たよ!」と言ってくださります。そういう意味でも今回の取り組みをやって良かったです。うなぎの資源や伝統を守りながら、新しいことにチャレンジしたいです。

話が変わりますが、宇宙食の漫画「宇宙めし!」の最終巻に出させていただきました!
漫画の中では、お店は「観光荘」ではなく「かんざわ荘」となっています。
宇宙日本食意見交換会という、宇宙日本食の開発に取り組んでいる企業が集まる会があるのですが、その会で漫画家の先生から、この漫画が宇宙食の認知を広めていることを聞いていました。あるとき、私の妻が友人にうなぎの宇宙食を目指していることを伝えたところ、その友人が宇宙食について詳しかったため、その理由を聞いてみたら、この漫画のアシスタントをやっていることがわかりました。しかも、漫画家の先生が私と同じ長野県在住でした。そのご縁で、漫画にしていただきました。

漫画「宇宙めし!」最終巻

宮澤様が登場しているページ

宮澤様、お忙しい中インタビューにご対応くださり、ありがとうございました!
宮澤様の前向きにチャレンジしようとする姿勢が、多くの方々に伝わり、うな重の打ち上げやTHETAによる撮影だけでなく漫画に描いていただくなど、多くの結果につながったのだと思います。
今後も宇宙食やうなぎ資源を守る活動に取り組まれるとのことですので、将来どこかで宮澤様の活動を拝見できるのを楽しみにしています。

高校生から、取り組みを終えての感想

最後に、高校生からも、取り組みを終えての感想をいただきましたのでご紹介いたします。

徳永さん
この度は私たちのプロジェクトの応援をいただきありがとうございました。 私は小さいころに宇宙に興味を持ち、行ってみたいと思っていましたが、行くことは難しいと知り諦めていました。しかし今回のプロジェクトで夢だった宇宙に近づくことができました。360°カメラがあったからこそ、とても迫力のある映像を撮影することができました。ありがとうございました。

竹村さん
この度は、私たちのプロジェクトを応援してくださりありがとうございました。 機材のトラブルで上空11kmまでしか撮影できていなくてとても悔しかったですが、成層圏を撮影できて、僕らの実験内容である超長距離通信もすることができたので良かったと思います。360°の映像はとても綺麗でしたし、成層圏から地上や空を見ることができ、感動しました。また機会があるならもう一度チャレンジしてみたいです。

白瀬さん
この度は、このプロジェクトを応援してくださり、ありがとうございました。「宇宙を見てみたい!」という僕たちの夢をなんとか達成することができました。最高高度で撮影ができなったことはすごく悔しかったですが、雲を抜けた地点での360°動画は迫力があり、素晴らしい映像を撮ることができました。カメラが動くのか不安でしたが、成層圏でも動作できたこのカメラが使えて本当に良かったです。

本番の打ち上げで気球に搭載された機材一式

今回の取り組みが、高校生にとって素晴らしい経験となったことを嬉しく思います。この経験を今後の人生に活かして、明るい未来を築いていっていただければと思います。
今回のように、多くの方々がわくわくするような取り組みが、今後も出てくることを期待しています。

うなギャラクシープロジェクト応援ページ
Webサイト:
やなのうなぎ観光荘: https://kankohso.co.jp/
松本工業高校 うなギャラクシープロジェクト: https://matsukokikyu.jimdofree.com/
クラウドファンディングページ: https://camp-fire.jp/projects/view/498869
Instagram:
@kankohso (https://www.instagram.com/kankohso/)
@unagalaxy (https://www.instagram.com/unagalaxy/)

※規格外の環境でのTHETAの使用は、お客様自身のご判断と責任のもと、実施していただいています。

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