ここ数年、360°カメラ RICOH THETAを活用した不動産物件や施設のバーチャルツアーを、世界中で目にするようになりました。海外では、360°バーチャルツアー撮影を専門としたプロのフォトグラファーたちが数多く活躍しています。
RICOH THETAはワンショットで360°撮影をすることができるため、撮影はとても簡単です。ただ、限られた時間で効率よく物件撮影するためには、いくつかコツもあるようです。今回は、一眼レフや360°カメラを使った、パノラマ撮影のエキスパートでもあるUS在住のSam Rohn氏に、360°カメラで効率的に物件撮影をするコツや、THETA XやTHETA Z1を使う際のポイントについて、お話を伺ってみました!
THETA Z1
360°バーチャルツアー撮影の準備
撮影するタイミング
きれいな撮影をするためには、撮影日の天気やその時間帯の光の加減が、重要なポイントのひとつになります。雨や曇りの日ではなく、できるだけ晴れている日を選びましょう。
Samによると「撮影した画像のクオリティは、太陽光など自然の光がどの位置から差し込むかに、かなり左右される」とのこと。
The Quay Tower, THETA Z1, HDR-DNG edited
例えば、太陽が撮影する建物の裏側にある場合、部屋の窓からは自然の光に照らされた、素晴らしい街並みや景色を撮影することができるでしょう。また逆に、撮影する部屋の窓に、直接日光が差し込む位置に太陽がある場合は、部屋全体が光で包まれた雰囲気になります。太陽光の加減によっては、部分的な白飛びを抑えるため、カメラの撮影設定を調整する必要があるかもしれません。
Samは、太陽の自然光を含め、その部屋をどのような雰囲気で撮影したいかイメージしながら、撮影する時刻をアレンジしているそうです。
East 31 St Apartment, THETA X HDR
※RICOH360 Tours によるAI画像補正後
照明器具の確認
撮影する時間帯の調整や、施設の規模や間取りの確認に加えて、もうひとつ大切な点が「撮影する場所の照明器具の事前確認」だそうです。一番ベストなのは、すべての部屋の照明がすべて使える状態であること。例えば入居前の施設や物件の場合、電気が使えないタイミングだったりすることもあります。そのため、すべての部屋に照明があり、それが付く状態であるかを部屋のオーナーに確認しておきましょう。
East 31 St Apartment, THETA X
※照明を付けない状態で撮影したリビング
撮影場所の整理整頓
限られた時間の中で効率的に撮影するためには、撮影する空間が既に整っている状態であることが必要です。特に、人が普段生活したり仕事したりしているスペースを撮影する場合は、画像に映り込んでは困る写真や個人の持ち物など、事前に隠しておいてもらうよう、クライアントに伝えておく必要があるでしょう。360°撮影は空間がくまなく画像に映り込むため「映したくないものを隠す対応」も必要になりますね。
撮影時に持参するアイテム
撮影するカメラだけでなく、もちろん三脚などカメラを固定するアイテムも必要です。Samは、撮影前に「レンズをきれいにしておくこと」が、特に重要だと言います。そのため、レンズを拭くためのクロスやブラシが、彼の撮影時の必須アイテムだとか。1ショット撮影するごとに、レンズに埃などが付いていないか、必ずきれいに拭いて確認することを怠らないそうです。
THETA X
また、必要な時にすぐにカメラやスマホを充電することができるよう、USBのポータブル充電器も必ず持参しているそうです。THETA Xであれば、交換バッテリーを持参するということでも良いかもしれませんね。
撮影する360°カメラ
THETA Z1?それともTHETA X?
最も重要なバーチャルツアー撮影をする場合には一眼レフを使っているSamも、小規模な施設や物件など、撮影する空間の規模によっては、THETA Z1を活用しているそうです。最近登場したTHETA XとTHETA Z1、どちらがおすすめ?という質問に対して、「画質に加えてタッチパネルによる操作性も重要視したい場合は、THETA X。また、どんなシーンでも高品質な撮影を行いたい場合は、THETA Z1を使うのがおすすめ」とのことでした。
THETA X
RAWデータに対応しているTHETA Z1の場合は、RAWで撮影をしてLightroom Classic等編集ソフトで画像を好みに編集するのがSamの使い方です。一番重宝しているのは、Dual Fisheye RAWプラグインを使った、ハイダイナミックレンジのRAW撮影・編集方法だとか。
ただ、RAWの編集はテクニックも必要なので、JPEGのみで十分、という方にはTHETA Xを活用するのが良いでしょう。
撮影する場所
撮影スタート!
カメラを置いて撮影する場所は「その空間の特徴を的確に映すことができるポイントであるか」を考えて選びましょう。通常は部屋の中央にカメラを置いて撮影しますが、リビングなど広い空間の場合は、複数ポイントで撮影する必要があります。Samは、通常は窓の近くで撮影することはしないそうですが、外の景色がとても印象的なこのリビングのような場所では、あえて窓の近くにカメラを置いて撮影することもあるとか。
The Quay Tower, THETA Z1, HDR-DNG edited
撮影した画像に何か不要なものが映り込んでいないか、レンズに汚れがなかったか、スティッチエラーがないかなど、細部までこだわるSamは、THETA Z1で撮影した場合、撮影後に画像をスマホに引き取って確認しているそうです。THETA Xの場合は、本体のタッチパネル上ですぐに画像確認できるため、より便利になりますね。
THETA X
バーチャルツアーサービス
Samが使うバーチャルツアーサービスは?
撮影した360°画像は、バーチャルツアーサービスを使って表現しましょう。世界にはさまざまなバーチャルツアーサービスがありますが、Samのお気に入りはKrpano。ただ、使いこなすにはコーディングなど少し特殊なテクニックも必要だそうで、もう少し簡単に使いたい場合は、3D Vista、Kuula、CloudPano、そしてRICOH360 Toursなど、より使いやすいサービスなども良いのではないか、とのことでした。
クライアントのニーズや撮影する画像点数など様々な要素で、どのサービスが自分にとって最適か、検討してみてください、というのがSamからのアドバイスでした。
ぜひ皆さんも、THETAを使ったバーチャルツアーにトライしてみてくださいね!
Photo by Sam Rohn
編集:平川