(はじめに)
我々リコーは、お客様の困りごとを独自のソリューションで解決していくことを目指しており、その基となるのが技術開発です。
これまでにない新たなソリューションを提供するには、新たな技術、すなわち発明を創出することに他なりません。
必要は発明の母、と言われますが、いったいどのような工程の中で発明が創出されているのか、このブログで紹介していきます。
なお、ここではこれまでにない視点、発明を主人公と見立てて話を進めていきますので、読者の皆さんも発明になった気持ちでお読みいただければ臨場感を感じられるかもしれません。
それでは、発明:「パテちゃん」の物語をお楽しみください。(本物語はフィクションですが、おおよそこのような感じでお客様の課題を解決に向けて日々努力しております)
(ナレーション)
―パテちゃんの生まれるすこし前の話―
リコーの営業マンがお客様のところへ訪問しており、コミュニケーションを取っています。
少し違うのは、営業マンだけでなく技術者も交じっていることです。
お客様は不動産関連の方で、どうやら「全天球画像を使って物件の雰囲気を簡単にお客様へ提供したい。でも複雑なシステムは使いたくない・・・」との課題というか困りごとともとれる話を、リコーの営業マン、技術者たちにしてくれています。
数々のソリューションを提供してきたリコーのメンバーは、単にお客様の困りごとを聞いているだけではありません。
リコーの営業マンとお客様との会話を聞いている傍らで、同席している技術者の頭の中で何やら・・・
ポンッ!
パテちゃん: Pat!
私は発明のパテちゃん。皆さんこんにちは。
まだ生まれたてなのでヨチヨチ歩きですが、この技術者たちが私を育てあげてくれそう。
(ナレーション)
ここに飛び出てきたのは、技術者の頭の中だけでうっすらと見える程度の発明、パテちゃん。
パテちゃんを少し説明すると、お客様の課題「全天球画像を簡単に提供できるようになりたい」に呼応して、全天球を撮影できるRICOH THETA(リコー・シータ)を用いたものでした。
パテちゃん:
全天球画像を使えば余すことなく物件の情報を必要な人に見せられるわ。
だって全天球画像は撮り忘れなんてなく、誰が撮っても周りの情報はすべて撮影されるから、情報の漏れは無くなるもの。
でもこれじゃあ、お客様が開発することになって大変だわ。。
微妙よね。。
そうそうこうしたいのよ。
でも、どうやってみんなに提供するのだろう。
ここは技術者たちに期待しましょ、だってみんな粘り強く私を育ててくれるもんね!
(ナレーション)
おや、お客様のところから帰ってきたリコーの営業マンと技術者たち、さらに製品企画の人たちとで社内で振り返りをしています。
どんなことを話しているのでしょう?
っと、ここは企業秘密なので詳しいことは言えませんが、どうやらパテちゃんをどのように成長させるかについてのようです。
パテちゃん:
何だか私、技術者によっていろいろなものが取り付けられているわ。
これはなんだろう。。
あ、これって私の心臓部分、一番肝心なところじゃない!
(ナレーション)
技術者たちによって、パテちゃんがどんどんと作り上げられていきます。
出来上がったパテちゃんはこんな特徴です。
1. RICOH THETAで撮影した全天球画像はリコーのシステムに保存されている。
2. お客様(画像提供者)が画像を見てもらいたい人(画像閲覧者)が、全天球画像を見ようとしたときには、リコーのシステムから全天球画像を見るためのスクリプト(※)を送信する。
というものです。
今までは、全天球画像をお客様に送るだけでは、お客様側で画像閲覧者が全天球画像を見られるようにするための閲覧スクリプトを作成する必要がありました。
しかし、今回はリコーからスクリプトを提供できる仕組みにしたので、お客様はスクリプトを用意する必要が無く、簡単に画像閲覧者に全天球画像を提供できるようになります。
※スクリプトとは
IT用語では、簡易的なプログラムのことを指します。今回の場合は、全天球画像を表示させるためのプログラムと思って頂ければ大丈夫です。
パテちゃん:
これでお客様は、画像閲覧者の人たちに簡単に全天球画像を見せられるようになったわね!
(ナレーション)
ヨチヨチ歩きだったパテちゃんはこうして発明として成長していきました。
発明まで成長したパテちゃんはこれから特許庁へ出願されることになったようです。
特許庁では、パテちゃんを “特許” として認めるかどうか、厳正なる審査の下で判断します。
企業は、特許によって自社の技術を守り、企業はお客様へサービスを安定して提供できるようになります。
さて、パテちゃんに話を戻しましょう。
特許庁へ出願されたパテちゃんの審査がこれから始まるようです。様子を見てみましょう。
パテちゃん:
これから審査が始まるのね。
厳しい審査と聞いているから緊張するわ。
(ナレーション)
特許庁では、特許になるかどうかを判断する担当者によって、出願された発明(いわゆる請求項)が、新しくて簡単には思いつかない内容なのか調査されます。
調査の結果、新しくない、簡単に思い付く、と一度は担当者に判断されてしまうのが一般的です。
このように担当に判断されてしまったときに、企業で特許庁とのやり取りを取り持つ特許担当と技術者が協力して発明を修正し、再度担当者に見てもらいます。
さて、審査の結果はどうなったのでしょうか。
パテちゃん:
え?私を特許として認めてくれるの!?
やったわ!これで私も一人前の特許よ!
嬉しいわ!!
(ナレーション)
おめでとうございます!
パテちゃんは無事に特許として担当者から認められたようです。
もっと波乱万丈な審査になると思っていましたが、新しさ、優れていることをこんなに早く認めてもらえるとは、パテちゃんもなかなかやりますね。
(実は、発明をもっと分かりやすく説明しなさい!と一度担当者から言われているのはここだけの秘密。パテちゃんには黙っておきましょう)
・・・おや?パテちゃんのことを認めない人もいるみたいです。
特許庁が特許と認めてから6ヶ月以内であれば誰でももっと厳しく審査をして欲しいと申請することができます(特許異議申立制度)。
これにより、特許庁の審査にどんな人でも関わることができるようになり、審査に公平性を持たせることができるようになるのです。
異議を唱えられると、その発明は、さらに厳しい審査を受けることになってしまいますが・・・
パテちゃんは大丈夫でしょうか・・・
パテちゃん:
一人前になったと思ったのに・・・これは試練ね。
乗り越えて見せるわ!だって私には発明してくれた技術者も、特許担当の人もついているんだもの!
粘り強く支えてくれるはずだわ!
(ナレーション)
あきらめずに頑張れるなんて、パテちゃんはすごいですね。
ここで、パテちゃんの特徴をもっと詳しく整理してみましょう。
①お客様のシステム(例えば不動産HP)で、物件の情報(例えば物件名)と紐づけて全天球画像のリンクを管理している。
②リコーのシステムで、リンクに対応する全天球画像と、その全天球画像を表示するための閲覧スクリプトを管理している。
③お客様のシステムで、画像閲覧者(例えば不動産HPを見ている人)が全天球画像を見たいと要求をする(例えば画面上の「全天球画像はこちら」のボタンをクリックする、タップする)と、リコーのシステムが、画像閲覧者の端末へ、リンクに対応する全天球画像と、スクリプトを送信する。
今までの技術では、1つのシステムで全天球画像の管理と表示をさせていたようです。
しかし、パテちゃんは、お客様のシステムとリコーのシステムを連携させているところがポイントとなっているようですね。特に③の特徴を担当者にアピールするようです。
さて、パテちゃんは、審判官に認めてもらえるのでしょうか?
パテちゃん:
やったわ!!!
特許として認めてくれたわ!
でもこれはまだ始まりよ。
これからお客様が全天球画像を簡単に画像閲覧者の人に提供できるようになっていくのが楽しみだわ。
(ナレーション)
パテちゃんおめでとうございます!
今度こそ、これでパテちゃんは特許として認められました。
こうして、お客様の困りごとを解決する独自のソリューションの技術開発がひと段落しました。
しかし、パテちゃんも言っているように、これはまだ始まりにすぎません。
我々が提供する新たなソリューションが新たな技術と特許庁に認められることはゴールではなく、これからもお客様の困りごとを解決するために技術開発を進めてまいります。
★特許6954410
出願日:2020年6月18日
公開日:2020年10月15日
登録日:2021年10月4日
異議申し立て後に特許維持判断された日:2023年8月31日