グローバル化やデジタル化が世界的に進み、社会の変化が激しく予測が難しくなっている中で、「答えのあるものを正確に早く答える力」よりも、「複雑でなかなか答えが出ない問題に取り組む力」が重視されるようになりました。その力を育むために学校教育で取り組まれているのが「探究学習」です。探究学習とは、生徒自らが課題を設定し、解決に向けて情報を収集・整理・分析したり、周囲の人と意見交換・協働したりして進めていく学習のこと。

文部科学省が定める新しい学習指導要領として2020年から小学校、21年から中学校、22年からは高等学校でスタートしています。

また、経済産業省では日本が新しい価値創造やイノベーションを起こしていくためにも人材育成が重要と捉え、新しい学習指導要領のもとで、様々なEdTech(エドテック)を活用した新しい学び方を実証する「未来の教室」を全国の学校や企業と連携して進めています。

そのような時代の流れから、360度カメラという新しい技術を活用して探究学習に活用する事例がいくつか出始めています。そこで、この記事では「子どもたちが360度カメラを使って学習する事例」と「360度画像を使って作成された教材で学習する事例」の二つを紹介したいと思います。

まず、「子どもたちが360度カメラを使って学習する事例」の一つに「360度カメラを使ってバーチャルツアーで防災マップを作る」という学習があります。

大地震や大型台風などの発生時には学校が避難場所になるケースが多いため、避難場所までのルートを360度カメラで撮影し、撮影した場所を繋いで学校までの避難ルートをバーチャルツアーにする。そして、危険な場所、注意ポイントはアノテーション機能を使って360度画像内に記入します。ここでの学習のポイントは、子どもたちがグループのメンバーたちとともに、避難ルートを確認しながら「どこが危険な場所か?」「どこに注意ポイントがあるか?」を考え、相談しながら作っていく過程にあります。作った防災マップを学校のホームページに掲載すれば、地域の方々にも役に立つ情報になるため、一石二鳥です。

次に「360度画像を使って作成された教材で学習する事例」では、360度画像を有効活用できる教科の例として理科や生物、英語が挙げられます。

例えば「理科」では、360度画像に写っている公園の風景と、指している方向が違う2つの方位磁石から「どちらの方位磁石が正しいか?」という問いを解きます。ここでの学びのポイントは、360度画像に写っている公園の風景にある時計や影の方向から東西南北を導き出すというもので、解決のヒントを見つけて解いていくプロセスにあります。

Post from RICOH THETA. - Spherical Image - RICOH THETA

(上写真)正しい方位磁石を考える理科の教材

「生物」では、360度画像に写っている植物や昆虫をヒントに撮影地域を特定するなど、観察する力や知識を複合的に積み重ねて答えを導き出す力を養うことができます。また、「英語」ではコーヒーショップの360度画像を使って、そこに写っているメニュー表や座席などの情報を使って英会話で注文したり店内の様子を確認したり、街中の360度画像を使いながら道を尋ねたりと、活きた会話を培うことができます。

一般的な写真は2次元に切り取られた限られた情報であり、切り取る構図は撮影者の意図が入りますが、2次元に切り取られていない360度写真は、そこに写った多くの情報から取捨選択したり、いろいろな気付きを得たりすることができ、探究型の学びに向いています。

今後の動きとして、文部科学省では「デジタル教科書」の導入を検討しており、それに併せてVR(バーチャルリアリティー・仮想現実)を取り入れた体験型学習を行うことも検討されています。360度自由自在に見渡すことで視界が自由になることから、考える力を養う機会が増え、受動的な学習から「自ら問を立てる」能動的な学習へ促すことが期待されています。また、理解力を促進すると共に、没入感を得ることで脳を刺激し、学びに対する意欲の向上が期待されています。

この他にも、VRを取り入れることで社会科見学を遠隔で行ったり、途上国の社会課題を360度映像で学んだりと、臨場感ある体験で見聞を広げることもできます。

リアルな体験を補完するための一助としてVRを取り入れるなど、今後ますます360度カメラの活用に期待が高まっていくと思われます。

サイドバナー