近年、ゲームや映画、テレビ番組、アニメーション、広告など、CGを活用したコンテンツを見かけることが多くなりました。これもCGだったの?!と思うコンテンツは数多くあり、あまりのリアリティさに驚く事も少なくありません。
CGは、実在しない世界を表現したり、実際に撮影が難しい映像を作ったりすることができる手法です。例えば、映像が残っていない昔の風景を再現したり、現実の世界にアニメキャラクターを登場させたりすることができます。
CGを利用する事で映像コンテンツの幅が広がり、仮想の世界とはいえ、私たちの見ている現実の社会に無くてはならない存在になっていると言えるでしょう。
CG制作では、光が必要不可欠なのを皆さんご存じですか?
光が物体を照らし、その反射を私たちは見ているので、光がないと物体を見ることができないのです。
というわけで、CG制作では光の情報は無くてはならないと言う事がお分かりいただけたと思います。
その光を、目的に応じてCG映像に取り込むことによって、よりリアリティのあるコンテンツを制作することができます。
そしてその光の情報を得るのに、THETAが活用されているのです。
今回は、リアリティ溢れるコンテンツを数多く制作している、株式会社アマナ CGクリエイターの小谷さんにCG制作でのTHETA Z1の活用方法についてお話を伺いました。
また、小谷さんが実際に制作したCGコンテンツも合わせてご紹介します。
小谷さんがCGに興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?
僕が小学生の頃に叔父がホームビデオカメラを買って、それを面白がって自分でも色んな物を撮っていて、それが映像制作に興味を持った始まりだったかなと思います。
実際にCGの表現を知ったきっかけは、ジュラシックパークでした。実写にあり得ない物が存在している事が面白いと思って、自分でも制作したいとCGに興味を持ちました。
CGクリエイターになってからもうすぐ20年になります。アマナに入社してからも6年くらいです。
これまでCMやテレビドラマや映画などのCG制作や実写映像と3DCGを合成する実写合成など多岐にわたってやってきました。
中でも、VFX(Visual Effectsの略)の実写合成分野を、数多くやってきています。社内でも、他のスタッフよりは実写合成の実績が多い方だと思います。
イベント等でリアルタイムCG(即時にレンダリングされるCGのこと)もやっています。最近ではインタラクティブなコンテンツの要望が増えてきていますね。
フォトリアルな写実的な絵を作ることができるので、ここの表現、技術、ノウハウを深めていきたいと思っています。
小谷さんが携わっている分野のCG制作の傾向は過去と比べて変化してきているのでしょうか?
技術も発達してCGで表現できることが増えてきたのと、それを求める人もCGで可能な表現が分かっているので、需要は増えていると思います。
昔はプログラムを書いて制作する必要がありましたが、今では誰でも制作できるようになってきてどんどん広がっていると感じます。CGは幅広いので教えてもらうにはあまりにも膨大な時間がかかります。それが今はソフトウェア等の進化により、誰でも興味があればクオリティの高いCGが作れるので、趣味で制作した面白いフォトリアルな作品が世の中にたくさん出てきています。
CGを作れる事が特別なことでは無くなり、何を作りたいかと言う事が重要になってきていると感じます。
個人が目的を持って作った映像を世の中に発信できる時代なので、そういう個人が選ばれてプロジェクトに集められ活動していく、という形になって来るのではないかと思っていて、プロとしては危機感を感じています。
ただ、プロとしては、お客様の要望に合ったコンテンツを提案し、それを受けて形にしていくので、自分の作りたいものだけが制作できればいいと言うわけではないですね。
―なるほど、プロはお客様に合わせたあらゆるコンテンツを制作できると言う事ですね。
CGを制作するにあたって、小谷さんがこだわっている事はありますか?
自分がいいなと思っている物を提案して作りたいと思っても、それに対してお客様が違う要望だった場合、お客様の要望を咀嚼して、こう言うのがいいかなと、自己満足にならずお客様に寄り添った提案をする様にしています。
もう一つは、なるべく楽しんでやりたいと思っています。お客様からの高い要望も楽しんで乗り越えて、自分が納得した物を作り出したいと思っています。
CG制作でTHETAを使い始めたきっかけは何だったのでしょうか?
THETAはアマナに入ってから知りました。HDRI専門家がいち早く使っていたので、自分でも使ってみようと思ったのがきっかけです。
正直なところ、最初はTHETAが使えるのか半信半疑だったんです。
実写映像では、CGを違和感なく合成するために、撮影現場のライティングを、銀玉やカラーチャート、一眼レフなど様々な物を準備してあらゆる角度から撮影をします。撮影した後の生成にもかなりの時間がかかっていました。HDRI撮影するのも、専門の人に撮影してもらう必要がありました。
機材の費用もかかるし、時間もかかります。ところがTHETAだけでそれが撮影できると聞いて、その手軽さゆえに疑っていました。
実際に撮影してみると、街のライティングを撮影する時に、今までは何枚も撮影していたのが一発で全天周の撮影が可能なので、時間に余裕がない場面でもさっと取り出して撮影でき、取り回しが楽で、専門家がいなくても撮影できると言う事が分かりました。
そればかりではなく、今までは撮影が困難だった、小さい物を撮影する場合に狭い場所でもTHETAだと入れて撮影できたり、高い場所も一脚を使えばTHETAだったら可能となり、今までは諦めていた所も楽に撮影できます。
僕は現場でコラボレーションしている感じが好きで、プロデューサーや制作者、現場の人と話をしながら、CGの良いところと実写の良いところを設計してより良い物を作りたいと考えています。
昔は蚊帳の外でCG担当の人は後ろの方で待っているような感じでしたが。
最後にTHETAに期待することがあれば教えてください。
バッテリーの減りが速いので、ここはもう少し改善して欲しい。
あとはブラケット撮影の設定がもっと簡単に、短い時間でできると良いですね。
現場で撮影している間に最適露出を入れていくのですが、その時の状況で光の明暗差が違うので、毎回違う設定が必要になります。センター露出を入れて、必要最低限だけ設定すれば良いくらいになるとありがたい。カメラのプロではないため、設定するのに割と時間がかかっていて、その間にバッテリーも減っていく感じで。
あと、THETAとスマホのWi-Fiがつながらない事があって、現場を待たせることになるので、慌ててしまい上手く撮れないことがありますね。
また、これはあまり必要ないかな?とは思うのですが、もう1つ、外で太陽が出ている場合は、もう少し絞りたいなと思う時があります。太陽を撮るのはまぁまぁ不可能に近いので、強い太陽光はCGで足したりはするので、足りてはいるのですが。
―ありがとうございます。これからも、CG制作にTHETA Z1をご活用ください!
■小谷洋輔 CGスーパーバイザー
Team KEEEN
株式会社アマナ
・お使いのソフト
Softimage、Maya、Houdini、3ds Max、Unreal Engineなど
■実際に制作されたCGコンテンツ
NHKドラマ 岸部露伴 第1シーズンにて
作品名「岸辺露伴は動かない」
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©LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社
©NHK・PICS
制作 NHKエンタープライズ
制作・著作 NHK P.I.C.S.
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《RICOH THETA Z1での撮影はこちら》
編集:坂本
撮影:大原