いま、世の中は5G通信、IoT、AIの時代を迎え、またコロナ禍でのオンライン化の加速も加わり、学びの環境が大きく変わろうとしています。
今回は、360度カメラTHETAの画像を活用し、子供たちの学びを「楽しく学べる」「学習効果が高い」ものへと変える目的で、「VRschool」というサービスをはじめた株式会社テンアップの金谷 建史さんに、VRの技術を使ってどのような学びの場を提供しているのか、お話を伺いました!
VRschool空間にアバターがいる様子
VRschoolについて
VRschoolのサービスの概要について教えて下さい。
新型コロナウィルス拡大の影響で、大学を中心にオンライン授業が広まりましたが、そこでは授業への「参加感」や「臨場感」の不足が課題となっています。「VRschool」は当社が開発したVRシアター型のオンライン授業システムです。授業では、THETAで撮影した360度画像も活用しています。
©RICOH/JAXA
VRschool空間の360度画像の中にアバターがいる様子
教員や学生の分身となるアバターをVR空間の教室に配置することで、学生はアバターを通じて授業に参加している雰囲気を感じ取ることができます。
©RICOH/JAXA
THETAで撮影した360度画像の例
また、VR空間の背景をTHETAで撮影した360度の画像にすることで、あらゆる場所で授業を受けているような臨場感も味わうことができるのです。
実際にデモ環境で体験しましたが、THETAの360度画像の中を自分の分身であるアバターで動き回ることができたことに感動しました!
THETAの画像をVRで活用することは、教育においてどのような効果があるのでしょうか?
実際にリアルな場所で撮影されたTHETAの360度画像を活用すると、まるで課外授業のようなアクティブラーニングの効果が得られると考えています。
VRschool空間の360度画像の中にアバターがいる様子
単に何かの映像や画像を観てその感想を言う、というような授業スタイルではなく、自分がアバターとして360度空間に入り込み、動き回ってみる。そうすることで、まるでゲームのようにその空間にいる錯覚を得ることができ、より臨場感のある体験ができるのです。
THETAで撮影した360度画像の例
現在、近畿大学と株式会社増進堂・受験研究社との産学連携で、実際にVRschoolを用いたオンライン授業の実証実験を実施しています。実際に受講した学生へのアンケート調査では、VRschoolによるオンライン授業について高い評価を得ています。
<VRschool が学校など教育機関から選ばれる理由>
VRゴーグルも活用されているのでしょうか?
以前は、360度の教育コンテンツをVRゴーグルを使って子どもたちに見せる方法を提供していました。ところが、コロナをきっかけに、ZOOMなどのオンラインシステムを使った学習機会が急激に増えたため、当社もそれに合わせて360度空間を活用したVRオンラインシステム(VRschool)を開発しました。
VRschool空間の360度画像の中にアバターがいる様子
VRゴーグルでTHETAの360度画像を見ると、「わーすごい!」で終わるのですが、自分や友達のアバターと一緒になってオンラインでその空間に入り込み、アバターとして動き回ることで、より深い体験が得られるようです。
THETAで撮影した360度画像の例
360度コンテンツはどのように撮影されているのでしょうか?
リコーさんから提供して頂いた一部の画像以外にも、実際に授業をされる先生が、ご自身でTHETAを使って色々な場所で撮影し、授業で活用しています。
金谷さんが使用しているTHETA Z1
学校以外でのVR空間活用
学校の授業以外で、VRschoolはどのような活用ができるのでしょうか?
VRschoolの中にある「体育館」や「シアター」では、大人数でのイベントを開催しています。入学式や全校集会などの学校行事や、吹奏楽部のコンサートをオンラインで行うこともできます。
また、VRの職業体験会としても活用できます。子どもたちが、実際にその職業に就いている人にお話を聞いたり、普段は入れない場所見せもらうことで、自分の未来を考えることができるでしょう。
VRschool空間でのオープンキャンパスイメージ図
コロナ禍でなかなか学校見学会などが開催できない状況もあり、オープンキャンパスとしてVRschoolシステムを活用したいというニーズも増えています。キャンパス内を360°見渡すことができるので、リアルな学生生活をイメージすることができると思います。
また、VRの同窓会では、オンラインで当時のクラスメートや仲間と、母校の建物や近隣施設様子を臨場感高く楽しむことができるでしょう。
VRschool空間での同窓会イメージ図
自分たちで母校をTHETAで撮影し、旧友たちとアバターで入り込めたら、同窓会も盛り上がりそうですね!
最近では自治体からVRshoolのシステムを使って、360度コンテンツをまとめた街づくりで活用したい、という要望や、観光施設からの問い合わせも増えています。
確かに教育以外の場でも、オンラインでの360度VRコンテンツ活用の機会は、今後増えてきそうですね。
次に挑戦したいこと
最後に、金谷さんが今後挑戦したいことを教えて下さい。
自分たちはバーチャル・リアリティーをサービスとして提供する会社ではありますが、リアルでできるものを全てVR化していきたいとは思っていません。
VRで触れてみて、リアルでもっと好きになる。
どういうことかと言いますと、リアルではやらないことや行かないところでも、VRなら触れてみるきっかけが提供できると思っています。VRはきっかけではありますが、自分が気づいてなかったものを色々と体験できると思います。そして、できることならVRの後に自分の足で本当のリアルを感じてみてもらいたいと考えています。
株式会社テンアップ 代表の金谷建史さん
それを実現するためにも、僕らのVRにはCGで制作したものばかりでなく、THETAで撮影した本物の360度空間の静止画や動画がとても重要になります。
リアルとVR、CG画像と360度画像。
これに当社独自のコミュニケーション機能をプラスすることで、より多くの人に色々なものを感じてもらえるサービスを展開していけたらと思っています。
実は今、職業体験などでは子供たちが大喜びで遊んでくれています。またそこでは、実際にその職業に就いている大人たちが、日々どんな挑戦をしているのかを語ってくれています。
そんな挑戦する大人の背中を見て、また子供達も勉強を頑張ってくれています。当社のVRの世界から、とてもよい循環が生まれていると考えています。
本日はありがとうございました。360度空間を活用した、金谷さんの新しい学びの場でのチャレンジに、これからも応援しています!
VRschoolシステムの様子は、こちらのデモ用URLからぜひご覧ください。
※シアター空間に移動し、約1分経過した後、THETAで撮影した実際の360度空間に移行します。
※閲覧方法
【PCの場合】※Crome推奨
・キーボードの方向キーで移動。
・マウスで顔の向きを変更
【スマホの場合】
・移動したい方向にスワイプ
・長押しで移動
編集:平川
画像協力:JAXA、多和熊吉さん