「360度映像をライブ配信したいがうまく出来ない」という声をよく伺います。360度カメラRICOH THETAで撮影した360度映像を使ってライブストリーミングする方法は、以前、本Webサイトでもいくつかご紹介させて頂きましたが、今回はより具体的な事例を通して準備や撮影のポイントをご紹介したいと思います。

ご協力いただいたのは、以前もこのサイトでご紹介させて頂いたThe360合同会社様です。今回、The360合同会社の平田様、岡田様、高橋様に、小学校の卒業式をTHETA Z1を使って360度映像をYoutubeライブ配信した事例をもとに注意点やうまく撮影するコツをご紹介頂きます!

360度ライブ配信需要の変化

この半年間で、360度ライブ配信に対する需要は明らかに増えていると感じています。コンテストや演奏ライブなどをライブ配信したいという要望も増えているようですが、これについては “360度映像でなければならない”ケースはまだまだ少なく「今までと異なるユニークな映像を使いたい」というニーズに留まっているように思います。

学校行事のライブ配信ニーズも高まっており、我々The360合同会社では主に学校からのご要望を受けて学校行事のライブ配信を行っています。

360度ライブ配信が適したシーン

THETAを使った360度ライブ配信は、環境との相性があり、以下のように考えています。

・適したシーン  → 屋内の学校行事やイベント

・適さないシーン    → 屋外の学校行事やイベント(運動会など)

屋内の学校イベントが適する理由:

学校行事のライブ配信で360度映像が喜ばれるのは、自分の子どもを360度映像の中から探し、見つけて、動きを目で追える、という楽しみがあるからです。また、弊社の映像は『最高の特等席』で観ているかのような視点映像です。通常のでは父兄席からは見ることが出来ない位置にTHETAを設置して臨場感を味わっていただくことが出来ます。

例えば以前撮影した音楽会では指揮者と演奏者との間にTHETAを設置し、通常の映像では見ることが出来ない指揮者の表情が見れたり、演奏者の動きを見たりすることも出来ました。また、今回撮影した卒業式では演台の脇にTHETAを設置して、卒業証書を渡す校長先生と受け取る子どもの両方の表情を手の届くような距離で見ることが出来ました。

室内で行われ、動きに一定のパターンがあるような音楽祭、合唱コンクール、入学式、卒業式などは360度ライブ配信に適しています。お陰様でライブ配信したYoutubeのコメント欄には感動のコメントを多く頂いています。

運動会などの屋外イベントが適さない理由:

屋外で行われるような運動会の360度ライブ配信は適していません。実際、運動会を360度ライブ配信して欲しいというご要望を多く頂いたのですが、全てお断りしました。

理由は、以下の通りです。

・THETAは防水ではないため、屋外で開催する運動会では雨天リスクがある
・屋外での電源確保、ネットワーク確保が難しい
・競技によって撮影ポイントが変わるため機材の移動が発生する
・直射日光下だと長時間撮影時にTHETA Z1が熱を持ちサーマルシャットダウンになるリスクがある
・被写体が遠く、THETAの魚眼レンズでは被写体が小さくなってしまう

それでも配信を希望される場合は、カメラが設置される場所を事前に打ち合わせして、それに沿った行動などのご協力があれば可能かもしれません。また、カメラの性能がアップすれば、屋外の撮影でも対応できるようになると思うので、今後に期待しています。

事前準備:配信環境について

THETAを使ったライブ配信を成功させるためには、その環境に応じた事前の準備が必要になります。

ライブ配信をうまく行うために必要な、準備:

・PCスペック
・ネットワーク環境の整備
・音響環境
・THETAの配置
・電源や配線の整備

PCスペック:

最低限必要なのはゲームPC並みの高スペックPCです。

ネットワーク環境:

高額なライブ配信業者の場合は、そのイベントに合わせて専用のネットワークを用意しているようですが、弊社はできるだけコストパフォーマンス良くお客様にサービスを提供するため、ポケットWi-Fiで提供できる範囲内で行っています。

ネットワーク環境は4K映像を撮影するには上りスピードが13Mbpsは必要です。それ以下になると4K映像が配信できずに2K配信になるため、fpsを落とすなどの設定変更をしなければなりません。

音響環境:

THETAでも音は拾うことができますが、そのイベントで一番拾いたい音を確実に拾うため、本格的なイベントのライブ配信の際は、外部マイクを使用しています。

今回、音響収録は卒業式の会場である体育館のスピーカー配線が特殊だったため、スピーカー近くにピンマイクを付けて収録しました。舞台両脇のアーカイブ用THETA Z1は、THETA Z1本体のマイクで収録した音を使いました。立体音響マイクは良くも悪くもいろいろな方向の音を拾ってしまうため、ライブ配信では学校行事のように注目すべきイベントが行われている方向の音を拾うようにしました。

THETAの配置:

そのイベントに適した位置にTHETAを配置する必要があります。

今回は、THETA Z1を舞台の両端に1台ずつ、演台の脇に1台の合計3台を設置しました。両端の2台はアーカイブ用でライブ配信用は中央の演台脇の1台です。またTHETA以外に通常複数のプロ機材のビデオカメラでも撮影し、後日、アーカイブした360度映像と共にDVDに収録して提供しています。その際、アーカイブした360度映像を視聴できる特設URLをDVDの裏表紙に印刷しお渡ししています(セキュリティ面を最大限に配慮して、強化した特設WebサイトURLはQRで、ID、パスワードは盤面印刷にてをお渡ししています)。

電源や配線の整備:

撮影環境によって電源を確保できる場所やネットワーク回線が届く場所によってTHETAと接続するタイプCケーブルの長さ対応も必要です。

当日のトラブルシューティングについて

ライブ配信時に予期せぬトラブルが起こることがあります。どんなトラブルにも対応できるよう、経験値が必要になります。

配信が止まる:

今回の卒業式の配信では、配信が止まることもなくスムーズにいきましたが、その時のネットワークの環境で、突然配信が止まることがあります。

万が一配信が止まった場合でも、素早く新しいURLを取得し直し、配信を再開できるよう、何度も何度も事前に練習をしています。

配信用URLが変わった場合、そのURLを視聴者に連絡できるようなスレッドなども、事前に準備しています。

画像に黒い線などが出る:

THETAの画像サイズは特殊なため、配信用ソフト・OBS上で正しく設定しないと黒い線が出てしまいます。

また、出力先の配信画像サイズによっても、その設定を変更する必要があります。

詳しくはこちら→「Youtube動画」

360度ライブ配信を成功させるために

いろいろな環境でTHETAを使った360度ライブ配信を経験してきて言えるのは、電源やネットワークの撮影環境と被写体との距離によって、都度、その現場に応じた設定値を試行錯誤して見つけていくしかない、ということです。「こうすれば上手に撮影出来る!」といった解は残念ながらありません。

しかし、だからこそ、360度ライブ配信が出来る人を増やしていくために、我々の培ってきた経験を伝授していけるようなプラットフォームの開発を考えています。

特に学校行事の360度ライブ配信をやり続けてきて思うのは、コロナ禍が過ぎても360度ライブ配信や360度の映像記録のニーズは無くならないと言う事です。それは360度映像でしか見ることが出来ないシーンがあるからです。

全国には多くの小学校、中学校、高校がありますので、多くのカメラマンの方に我々の良きパートナーとして360度ライブ配信や360度映像記録に携わってもらいたいと思っています。そのために、一緒に仕事をしていけるパートナーに必要なノウハウを伝授し、協力し合えるようなプラットフォームを開発したいと思っています。今年中にはプラットフォームを立ち上げたいと思っていますのでもう少し具体的になったら弊社のWebサイトでもお知らせしていきたいと思います。

The360合同会社様の培ってきたノウハウを伝授して360度ライブ配信が出来る人を増やしていくという構想、素晴らしいですね。ぜひ今後のご活躍も楽しみにしています!

<参考記事>

【徹底解説!】360度カメラ THETA Z1でライブストリーミングに挑戦!~設定方法や配信のコツをご紹介~

STAY HOMEの今だからこそ、360度カメラのTHETAでYouTubeライブストリーミング配信

THETAを使った4K – VR(360度)ライブストリーミングの活用方法

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