この1年コロナ禍を背景に、遠隔でも360度空間をリアルに伝えることができる「VR動画コンテンツ」に対するニーズが急激に高まっています。
今回お話を伺う大村印刷 株式会社の事業推進部 永浜様は、多くの方に手軽にVR体験を提供することを目的に、360度カメラTHETAで撮影したVR動画コンテンツを制作し、それを1個100円*のコストパフォーマンスの高い紙製VRゴーグル、Auggle S2(オーグルエスツー)と共に提供しています。現在求められているVRコンテンツに対するニーズの変化やVRコンテンツ制作のコツについて興味深いお話を伺うことが出来ましたので、是非ご覧ください!
*注文個数3000個の場合
大村印刷株式会社 永浜敬久様
コロナ禍でのVRコンテンツニーズに対する変化
永浜さんには約1年半前にも、紙製VRゴーグル+VRコンテンツを提供するVR事業ついてインタビューさせて頂きました。コロナ禍のこの1年間、御社のVR事業において、お客様からのニーズに変化はありましたでしょうか?
弊社のVR事業では、コストパフォーマンスの良い紙製VRゴーグル Auggle S2と、360度カメラで撮影したVR動画コンテンツを組み合わせたサービスを提供していますが、コロナがきっかけで事業環境が大きく変わりました。自粛が進んだ昨年4月中旬頃から VR事業への問い合わせが急増し、手が回らないくらい案件が増えています。
大村印刷様製 紙製VRゴーグルAuggle S2とTHETA V
紙製VRゴーグルにお客様の企業紹介などを印刷し、そこに360度動画コンテンツをアップしているYouTubeのURLもQRコードで印刷しています。利用者はスマホでそのQRコードにして読み込み、Auggle S2をに装着してYouTube動画を観ることで、簡単に360度のVR体験をすることができる、というサービスです。
お客様側で360度VRコンテンツを撮影・制作される場合は、Auggle S2だけの注文も頂いています。
Auggle S2に印字されているQRコードからYouTube動画にアクセス
どのようなお客様からのご依頼が多いのでしょうか?
以前は、就職セミナーで活用する会社の施設紹介や、イベントなどでの子供向けノベルティとして活用して頂くケースが多かったです。
Auggle S2とスマホでVR動画を視聴
コロナ禍になり、学校関連からのご依頼が急増しました。ほとんど学校から、といっても良いくらいです。コロナの影響で、オープンキャンパスやオープンスクール実施することができなくなった学校から、学校内の施設を紹介するために360度VRコンテンツを活用したい、というニーズを多く頂いています。特に私立の学校が多いですね。
安田学園様でのオープンスクールVR動画撮影シーン
※株式会社アクセスネクステージ様からの撮影依頼
確かに、オープンキャンパスやオープンスクールなどによるリアルな施設紹介ができなくて困っている、という学校のお話は最近よく聞きます。視聴する方にはどのようにAuggle S2を配布されているのでしょうか?
学校説明会をオンラインで開催されるケースが多かったため、事前に学校から参加予定のご家庭にAuggle S2を送付し、スマホでQRコードを読み取り、YouTubeで施設紹介の360度VR動画を視聴して頂いています。その他に資料請求したご家庭に、資料と一緒位Auggle S2を同梱して、自宅に居ながらバーチャルで校内の見学をして頂いています。
安田学園のVRオープンスクール動画
※スマホで視聴の場合はYouTubeアプリ上でご視聴ください。
スマホ上のYouTube動画を指でグルグル動かしながら360度動画を視聴することはできますが、Auggle S2を装着して視聴して頂くと、より臨場感が増します。
学校の他にはどのような施設からの依頼があるのでしょうか?
企業様からの、新卒採用のための会社紹介用VRコンテンツのご依頼も引き続き増えています。コロナ禍でインターンシップができなくなってしまった企業様も多く、VR動画で会社内の紹介をしたり、バーチャルインターンシップのようなかたちで活用して頂いています。
また、高齢者施設や葬儀施設からのご依頼も頂いています。
コロナによる感染防止のため、利用希望者やそのご家族に対して、実際に施設に入って頂いての内覧ができなくなった施設が多いようです。VR動画で施設紹介することで、入居希望者や利用希望者に施設の雰囲気を360度で見て頂きたい、という目的でのご依頼でした。
介護老人福祉施設:エクレシア南伊豆様施設紹介VR動画
※スマホで視聴の場合はYouTubeアプリ上でご視聴ください。
※株式会社ジェイコム東京様からの撮影依頼
コロナの影響で施設を紹介できない、というのはどの施設にも共通した困りごとなのですね。
高齢者施設での撮影時は、ちょうどコロナの感染者が急増している時期だったため、撮影には細心の注意を払いました。
ただ、THETAの撮影はとても簡単なので、どの現場でも基本的に自分ひとりだけ、もしくは多くても二名で対応することが可能です。
通常の動画撮影の場合は、撮影・音響・照明を管理するスタッフなど、多くのスタッフが必要になるケースがあるかと思いますが、THETAの撮影はほぼ一人で実施できます。コロナ禍ではその点もお客様に対するPRポイントになっています。
苺農園(ICHIGOYA・SUN)でのロケハンの様子
THETAでのVRコンテンツ撮影について
永浜さんはTHETA Vをお使い頂いておりますが、THETAの良いところについてお聞かせください。
実はTHETA以外の360度カメラも持っていますが、THETAは動作が安定している点と、「音」が良いところも気に入っています。THETA V本体のみで、十分音が良いと感じています。より高性能な360度空間音声を録音することができる、別売アクセサリー 3Dマイクロフォン TA-1も気になっています。
また最近はTHETA本体のファームアップ対応で、動画の手振れもほとんど気にならなくなりました。当社のコンテンツはスマホのYouTubeアプリ上で閲覧されるケースが大多数なので、動画解像度は4Kで十分だと感じています。
360度動画は、そのままだと「どこを見ようかな」と視聴する方向を迷ってしまうこともあるのですが、御社が制作された360度動画は、視聴者が見る方向を迷わない編集が素敵ですね。
撮影した360度動画は、そのままではなく動画編集ソフトで編集し、視聴者に見てほしい箇所にテロップを入れたり、など工夫しています。
また、実際の撮影前にロケハンで現場に足を運び、THETAで撮影するのに適切な場所や、施設に合わせたコンテンツの流れ・構成をしっかり考えています。施設を紹介する出演者の方には「こちらを見て下さい」など、動画の中で見てほしい方向をしっかり伝えるよう、ディレクションも行っています。
動画に登場する、施設を紹介される方々は皆さんとてもお上手ですね。
実際の学校の学生さんや、職員の方々に登場して頂いています。ただ、撮影するのは360度カメラで全て映ってしまうので、カンペを用意したりすることができません(笑)。そのため、動画内に登場される方々には、事前に台本を丸暗記して頂くよう、お願いをしています。
安田学園様VRコンテンツ撮影シーン(中央にTHETA V)
たしかに・・・360度動画撮影だと、カンペは用意できませんね。撮影時、永浜さんはどこにいらっしゃるのでしょうか?
THETAをスタンドに立てて動画撮影している間、自分は近くに隠れて指示をしています。出演される方は、普通のカメラとは少し違う360度カメラの前でしゃべるわけなので、最初は緊張される方も多いです。そのため自分は撮影中、緊張しないよう盛り上げたりしてリラックスして演じて頂くことを心がけています。
撮影時のコツはありますか?
THETAは広角なので、できるだけTHETAの近くに立って頂くようにしています。THETAから1~1.2mくらいの距離が、映りも良く、声も拾いやすいと感じているため、出演者に立ってほしい位置にテープで印をつけています。
上の写真に写っている紐は、出演者に立ってほしいTHETAからの距離範囲をすぐに測れるようにするためのものです。
何の為の紐かなと思っていましたが、そのためのものなのですね!
360度動画なので、施設を紹介する出演者にはあまり大きく動き回らず、この紐の範囲内で立ち位置を数点決めて、最低限の動きをするようにお願いしています。
ドローン×THETAの撮影
最近はドローンでの撮影にもトライされているそうですね。
前回のインタビュー時にドローンを購入したとお伝えしましたが、その後ドローンとTHETAを組み合わせた360度空撮の案件が増えています。
THETAとドローンの撮影シーン
ドローンにTHETAなど機体以外の何かを装着する場合は、改造機体の扱いになりますので航空局に改造機体の申請をする必要があります。また、航空法で最大離陸重量と言う審査基準があり、大型の機体でないとこの基準をクリアできません。弊社で使用しているドローンは、THETAを装着しても最大離陸重量を満たしているものです。ただTHETAとドローンと飛行許可証を持っているだけで飛ばすと航空法に抵触しますので、360度空撮の業者選びには気を付けた方が良いと思います。
東京ドイツ村様 イルミネーションVR紹介動画
※スマホで視聴の場合はYouTubeアプリ上でご視聴ください。
ドローンがかなり大型なのは、そのためなのですね。このドローンは、下にTHETAが付いていますが、どのように離着陸されるのでしょうか・・・?
このままドローンが着陸するとTHETAが地面に激突してしまうので、離着陸用のカタパルトを手作りしました。実は着陸が一番難しいので、指の皮が剥けるくらい何度も何度も練習しました(笑)。
ドローン&THETAの離着陸シーン
ドローンを使った360度撮影の案件には、どのような依頼があるのでしょうか?
広大な観光施設などからのご依頼が多いです。イルミネーションで有名な千葉県のドイツ村様からのご依頼も頂きました。航空法を守った形で、先ほど申し上げたように360度の空撮を航空法でクリアしている業者はまだ少ないため、360度空撮のご依頼も増えています。
今後のVRニーズについて
コロナが契機でニーズが急増しているVRコンテンツの今後について、永浜さんはどのようにお考えですか?
コロナがきっかけではありましたが、このように遠隔で色々な表現をしていく流れは、今後もずっと続くのではと考えています。ご依頼が多い学校の案件もそうですが、高齢者施設や葬儀場など、コロナがきっかけでご依頼を頂くようになった施設も多いです。
今後は360度ライブ配信にもビジネスチャンスを感じており、例えば結婚式の360度ライブ配信など、色々なシーンでVRのビジネスを模索していきたいと考えています。
THETAを沢山ご活用頂き、ありがとうございます。今後もTHETAで撮影したVR動画コンテンツを、多くの方に届けて頂けると嬉しいです!
※THETA Vはご好評につき完売となりました。3分以上の連続360度動画撮影機能をご検討の場合は、静止画も最高画質のRICOH THETA Z1 51GBモデルをお求めください。
ご協力:
編集:平川
撮影:大原