技術者が語るRICOH360を支えるテクノロジー

vol.2  「良いものをつなぐ」目利きの流儀

 

 このシリーズでは、RICOH360を支えるテクノロジーについて担当する各領域の技術者へのインタビューを通し、4回にわたりご紹介します。

 第2回は、RICOH360のSaaS(Software as a Service)について。良いものなら他社サービスであっても積極的に取り入れ、クラウドの拡充を図っているというエンジニアの細野さん。その行動には彼が日頃から大切にする、柔らかくも芯の通った流儀がありました。

早く安く、最も良いものを

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 まず初めに、RICOH360のシステム構造について簡単にご紹介します。バーチャルツアー制作サービスのRICOH360 Toursと建設現場の情報を共有するコラボレーション・プラットフォームのRICOH360 Projectsはどちらも、モバイルのアプリとWebのアプリ、バックエンドの三部構成となっています。特徴はこれらが共通で使うサービス群(SaaS)です。360に関する画像処理は強みとして自社開発していますが、他のサービスはあえて自社開発をせず、世の中にあるSaaSを組み合わせて展開しています。例えば課金回りや、メール配信など。なぜ、このような仕組みになったのでしょうか。

 ーー 答えは〈質と効率〉です。素早く良いものを届けるために、最も効率の良いアプローチだと細野さんは話します。

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細野 英司

RICOH360システム開発リーダー

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外資系企業などを経て2011年リコー入社

RICOH GRのソフトウェアアーキテクトを担当し、2016年からはクラウド開発に従事

小学生の息子とラーメン屋散策をするのが休日の楽しみ

 「自分たちで全て開発するよりも、餅は餅屋というか。例えば課金回りはすごく難しいので、既に世の中で定評のあるサービスを使った方が良いものができるだろう、という考え方です。

 僕らの強みは360なので、そこに関しては自社開発しています。その他の色々なバックエンド機能は、他社のサービスをうまく活用する。このようなシステムは『サーバレスアーキテクチャ』と呼ばれています。クラウドにあるサービスを、繋ぎ合わせる部分だけ自分たちでつくってシステム構築する、最新のやり方です。世界中のコンピュータを繋ぎ合わせているとも言えますね」

 良いものを選定すると、すなわちRICOH360は良いサービスになる。逆にズレたものを選んでしまうと、全体の質が落ちて見えてくる。評価に直結する〈選び方〉には、細心の注意を払っていると話します。

僕らの追求するやり方で

 現在、選定しているサービス数はおおよそ30。国内企業の中でもとりわけ数の多い部類に入りますが、それゆえに培われた〈目利き〉の力には自負があります。

 「『いかに要所のポジションに信頼できるサービスを置けるか』が大切です。自分たちの知識だけでなく世界中の専門家の叡智も利用して、最も良いサービスをつくりたい。そのために360以外は他に任せるという方針です。じゃあその拠り所を、どうやって見つけるか。

 まずは記事やブログなど、常にアンテナを張ってウォッチします。執筆者のポリシーにも注目していて、個人あるいは企業の理念、その他の発信もあればチェックします。そして、気になったサービスは使ってみる。自分が使ったときに『気が利くな、安心できるな』と思えるかが僕の物差しです。

 また構造として模範になるサービスは比較分析して、『じゃあ自分たちはどういう風にやるのが良いだろうか』と深掘りしていきます。こうしたプロセスはチームで共有し、今後の育成に繋げています」

 自らのノウハウを教えるだけでなく、「これを使ってみたい」という周りの声があればぜひ色々試したいと語る細野さん。背景として、これまでに彼の提案を柔軟に受け入れ、後押ししてくれた上司たちの存在がありました。実現に向けて各所に働きかける姿を見て、自分も頑張ろうとモチベートされたそうです。これからの若手にも同じように、手を挙げたら挑戦できる環境と、それをサポートする体制を整えたいと考えています。

ものづくりへのこだわり

 細野さんは、他メーカーのコンピュータ部門で5年ほど開発を担当。その後、デジタル一眼レフ開発に異動され、転職後もコンパクトデジタルカメラ開発を担当し、デジタルカメラ関係の業務に10年以上携わられていましたが、2011年3月リコーのものづくりに取り組む姿勢に共感し、リコーに入社。現在のGR事業部を経て、2016年より現在のクラウド開発に従事しています。

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 「元々カメラが好きだった訳でもないのですが(笑)、良いプロダクトを作りたいという想いは人一倍強かったです。そして今、カメラでもクラウドでも、エッセンスは非常に似ていると感じます。繋ぎ合わせるのがカメラの中なのか、世界中のシステムなのかという違いです」

 システムをいかにうまく繋ぎ合わせるか、それこそがソフトウェア設計。他社サービスとの互換性に不具合がないか、常にモニタリングも行っています。ここ数ヶ月のRICOH360 ToursとProjectsの稼働率はほぼ100%と、安定した動きをキープしていました。

すべてはお客さんのために

 サービス選びだけでなく、RICOH360の構造にも工夫を凝らしています。

 モバイルアプリとWebアプリ、バックエンド。プログラミング言語はすべてJavaScriptに統一しています。一般的にWebアプリ開発ではよく使われる言語ですが、モバイルとバックエンドでは少数派です。しかしこの統一により、エンジニアがそれぞれのツール構築を横断できる仕組みを確立しました。

 今までモバイルを担当していた人も、柔軟にWebやバックエンドに対応できる。「一つの技術を極めるよりも、いかに早くお客さんの課題やニーズに応えられるかを大事にしたい」、そんな細野さんの願いが込められています。

「僕自身のモチベーションは、常に〈お客さんが満足できるか〉です。機能が完璧に動くかとか性能がどうとかよりも、重要視されるポイントがあると思っています。

 若手のエンジニアにも、お客さんの気持ちを感じ取る力を身につけてほしい。そのためには開発の深層部だけでなく表層に近いところも経験してもらい、〈使う人の立場を考える〉機会を増やしていきたいです」

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 今後はデバイスとサービスのつながりを強め、サポートも含めた一連の流れで良い技術を生み出したい、と細野さんは話します。サービスだけでなく、デバイスも含めた全体での品質保証やUXの向上ができたら、RICOH360の満足度も上がっていく。将来的にはAPIやSDKも公開して、お客さんが自由に使えるように構想しています。

 モノも人も、垣根なく繋がっていく。その先に見えるのはきっと誰もがワクワクする世界なのだと、私たちも信じています。

REFERENCES

RICOH360 Tours

https://www.ricoh360.com/tours/

RICOH360 Projects

https://www.ricoh360.com/projects/


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