技術者が語るRICOH360を支えるテクノロジー

vol.4「まずはやってみる」挑戦しつづける前向きな心

 このシリーズでは、RICOH360を支えるテクノロジーについて担当する各領域の技術者へのインタビューを通し、4回にわたりご紹介します。

 最終回は、360度カメラRICOH THETA※1の開発について。前職ではソフトウェア会社に勤め、2020年にリコーに入社したエンジニアの安藤さん。THETAの開発に打ち込んでいく中で、ものづくりの楽しさに触れたそうです。ご自身の経歴や体験談を交えつつ、その魅力を語っていただきました。

※1 「RICOH THETA」は、リコーが発売した世界初※2の全天球デジタルカメラの製品シリーズ名です。

※2 コンシューマ用途2013年時点

現場から学んだこと

 「前職では、音声処理エンジンや、テレビ電話の制御などを経験しました。しばらくしてWindowsのPCアプリ開発(試薬の評価・ビルの照明制御など)を5年ほど。その次に会社が受託したTHETA Sの開発に参画し、1ヶ月後には中国・深圳の工場に向かうことになりました」

 リコーに入社する前から、すでにTHETAとの接点があったという安藤さん。突然の海外出張でしたが、そこでの経験が開発への想いを一層強くさせました。

安藤 功

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携帯電話の音声処理エンジン開発、PCのネイティブアプリ開発、CMOSセンサー評価などの経験を経て、2020年にリコー入社。

現在はRICOH THETAのソフトウェア開発を担当。

趣味はドライブで、休日には家族と日帰りドライブを楽しんでいる。

 「初めて工場に行って、現場の方と一緒にご飯を食べたり、ざっくばらんにお話を聞いたりする中で色々な刺激を受けました。開発ではエレキ、メカ、ソフト、それぞれの担当者が責任とプライドを持って製作します。連日の画質改善の追い込みやレンズ調整など、細部にこだわり試行錯誤する姿を見て〈私もこの中でやっていきたい〉と憧れました。

 2019年まで開発を続け、その後はTHETA開発から一旦離れて他社のCMOSセンサー評価を行いました。ですがTHETAでの経験が忘れられず、縁もあって翌年リコーに転職しました」

 THETAを初めて目にしたときは「面白そうだな」くらいの印象だったと振り返ります。しかし実際に現場でカメラを組み立て、ソフトウェアで調整し、製品になるプロセスを見るうちに〈ものづくりの楽しさ〉を感じたそうです。「メーカーとして、自社製品をつくる会社に行きたい」という想いもこの頃から強くなりました。

可能性を広げていく

 リコーに入社してからは、THETAの開発一筋。360度画像の良いところは〈撮影者が意識しない中でも、全部が撮れていること〉だと安藤さんは話します。

「本人がここを撮るぞ、と画角を決めて撮るのが通常のカメラ。そこから広がり、意識しないところも写ってしまうのがTHETAの素晴らしいところです。情報として包括的に残すことができる、この可能性をもっと広げていきたいです」


 THETAの強みとして、高画質な静止画と豊富なAPI※3、プラグインがあります。THETA V、Z1、XではAndroid OSを導入し、後から機能を追加拡張できるプラグインの仕組みを持っています。またAPIやSDK※4の公開によって、エンジニアが自由に機能を開発できるようになり、これらは専用サイトから誰でも簡単にインストールできます。

※3 Application Programming Interface:ソフトウェアコンポーネント同士が互いに情報をやりとりするのに使用するインターフェースの仕様

※4 Software Development Kit:アプリケーション開発で機能の実装に利用できる開発キット

「自分でもプラグインを作ってみようと、取り組むことがありました。スマホで操作せずに自分の声かけでシャッターを切れたら使いやすいかなと。段々と仕事で忙しくなり完成までいかなかったですが、、、」

 安藤さんのように自ら可能性を感じて、試してみる人にはやはり受けも良いようです。一方で、単純に仕事として使う人にそのメリットは浸透しにくいという課題も。今後は機能としてのポテンシャルだけでなく、利用目的に合わせて簡単に使える機能の開発も強化したいと考えています。


 さらに静止画の強みだけでなく、動画やライブストリーミングにも力を入れる必要があると話しました。現状に満足することなく新たな視点も取り入れ、より使いやすい製品を目指します。

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 現在はお客さんの声をSNSなどから汲み取っていますが、前職では営業担当とともに、お客さんの要望を聞いて回っていたそうです。ヒアリングの内容からまず簡単にプロトタイプを作って話し合い、改良を重ねていきました。

 アプリ開発と製品開発では、プロセスも異なると話します。アプリ開発は、繰り返し改良していくアジャイル型。フットワーク軽く、リリース後も修正を重ねられます。それに対して製品開発はウォーターフォール型で、最初に仕様をしっかり固めてから工程を進めます。

「小回りを効かせるのが難しく、品質を一発で確保するという緊張感があります。そんな中でも製品をより良くするため、THETAのファームウェアは意欲的にアップデートしていますね。チームの熱量もあり、自分達でもよく頑張っているなぁと思います」

分からないを前向きに

 自身の開発への取り組み方として、〈チャレンジ〉という言葉を掲げる安藤さん。何でも飛び込んでみる姿勢は忘れないよう、常に心がけているそうです。

「何事もやるときは、分からないことの方が多いと思うんです。そんな中でも〈まずはやってみる〉ことを大切にしています。たとえ難しい作業を頼まれても、これは相手も期待して振ってくれたんだと前向きに捉える。やってみたら、何か面白いことがあるかもしれない。まずは結果を出してみて、相手に響くものがあればそこを突破口にして進めていきます。

 基本的に断れない性格で、できることなら引き受けたい。自分で世界を狭めてしまうと、しばらく経って後悔すると思っています。だったらやってみて『ごめん迷惑かけちゃった』って謝る方が、申し訳ないけど良いかなって」

 結局自分がやって、成功なり失敗なりを重ねないと何も自分の身にはならないーーだから、まずは行動してみること。今後は開発をリードできるように、自身の価値をしっかり作り込みたいと目標を語ります。

「数年後には、安藤という名指しでお願いされる人になりたいです。その信頼関係が築けた上で、次が見えてくるのかなと。そのためには今の仕事を一つ一つ地道に、またプラスαで興味あることにも手を広げていきたいです。

 ソフトウェア開発でも、大事なのは〈人〉です。スキルは後からやればついてくるけど、人の考えって一度決まると後から変えるのも難しい、、、とはいえリコーに関しては変な人がいないです(笑)みなさん何なんですかね、素が良いというか、人として尊敬できる方ばかりです。そういう意味ではありがたい人間関係ですし、もっと色々な人と関わっていきたいですね」

 これまでの経験に裏打ちされた、力強いメッセージ。将来のTHETAは、もっと多くの人に身近な存在になってほしいと想いを熱くします。良い意味で意識されないほど、自然と存在しているカメラであってほしいーーその夢に向けてTHETAの可能性を広げるだけではなく、操作性や利便性をさらに向上させ、〈より良い形でお客さんに寄り添っていける〉道を模索していきます。

REFERENCES

RICOH THETA

https://www.ricoh360.com/theta/